驚愕の事実!! 日本に実在するタイムリーパー

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ここ最近僕はパラレルワールド移動関係の記事ばかり書いているが、今日もまたパラレルワールド移動の話になる。ただ、今回は身体ごと移動するものではなく、意識だけのパラレルワールド移動の話になる。つまり、タイムリープだ。

タイムリープで一番有名なのは『時をかける少女』だろう。ひとりの少女が未来からやってきた未来人と高校の理科室で偶然遭遇し、以来、少女はタイムリープーーー任意の時間に意識を飛せる能力を獲得することになる。ちなみに、少女がタイムリープ能力を獲得することになったのは、未来からやってきた少年が持っていた、タイムリープ能力を発動させる不思議な香り、ラベンダーの香りのする香水だったーーー少し記憶が曖昧だがーーーはずだ。少女はこの香水を使うことによって、過去へとタイムリープし、大切なひとの命を救おうとするような話だった、と、筆者は記憶している。

ところで、今回このブログで紹介したいと思っているのは、『時をかける少女』に出でくるような、フィクション上のタイムリーパーではなく、恐らく現実に実在しているであろうタイムリーパーだ。しかも、その人物は日本人だ。

僕がこの人物を知ったのは例によってYouTubeによってである。現在は活動を休止されているようなのだが、サンビットというYouTubeチャンネがあり、この男女三名からなるYouTuberの方が、自分たちの動画のコメント欄に、ある興味深い体験談が書き込まれていたと僕が今回紹介したいと思っているタイムリーパーの話を紹介されていたのだ。

このタイムリーパーは十九歳の日本人の少年で、日常的にちょっとしたタイムリープを繰り返しているということである。たとえば、バスに乗ってちょっとウトウトと眠り、ふと目を覚ますと、自分がバスに乗った時刻よりも前の時間に時間が遡っていたりするようなことがしばしばあるということなのだ。

ちなみに、この十九歳の少年ーーー仮に彼をBとすると、Bは高校生の頃に、このようなちょっとしたタイムリープ体験ではなく、まさに世界線を飛び越えたーーーパラレルワールドに移動したとした思えないような強烈な体験をしているとのことである。

Bは高校2年の頃、学習塾に通うようになり、そこでAという名前の女性と出会い、親しくなる。その後、ふたりは学習塾以外の場所でも一緒に自習したりするような仲になっていく。と、ここで突然、Bは奇妙な体験をすることになる。というのも、ある日目を覚ますと、日付がもう過ぎたはずの1日前の日付に戻ってしまっていたのだ。

このことにBは違和感を覚えるも、きっと恐らく自分が何か変な思い違いをしていたのだろうと思って特に気に留めない。だが、この直後、決定的なことが起こる。というのも、BがAに連絡を取ろうと思ってケータイを開くと、一体どういうわけか、Aの連絡先がケータイから消えてしまっており、更にそれだけでなく、Aの存在に関わる全てのものーーーたとえばAとのラインのやりとの履歴や、一緒に取った写真などが完全にケータイから消えてしまっているのだ。もちろん、これは単にケータイが故障してしまってデーターが読み込めなくなっているとかではなく、Aに関するもの以外は何の影響もない。

これらの事態に混乱したBは、共通の知り合いであるCという女性にAが現在どうしているか確認を取ってみる。すると、Cさんから驚愕の返答が返ってくる。というのも、Cの話によると、Aは、Cがまだ中学生の頃に病気で亡くなってしまっているとのことなのだ。その後、Bは、CにどうしてBがAのことを知っているのかと奇異の目で見られてしまうことになる。

これはまるで映画か何かような話だが、しかし、Bの体験談にはまだ続きがあるのだ。

これはBが高校3年性の夏に起こったらしい。Bは高校3年になると、英語を専攻することにし、夏休みに入ると、高校で英語に特化した夏季講習を受けていたということだ。そして連日夜遅くまで勉強しているということもあってか、その日、Bは授業中にウトウトと眠ってしまったということである。すると、先生に「居眠りするなら、外で冷たい風に当たってきなさい」と注意されたということである。そしてBは当然のことながら、この先生の台詞に違和感を覚えることになったということである。というのも、今は季節は真夏で、外に出たところで、到底冷たい風にあたることなど不可能であるからだ。

しかし、Bは窓の外に目を向けた瞬間愕然とすることになる。何故なら、いつの間にか、窓の外の校庭にはうっすらと雪が降り積もっていたからだ。つまり、季節は、Bがほんの一瞬、ウトウトとしているあいだに、真夏から真冬へと移り変わってしまったのだ。しかも、Bには夏から冬にかけて過ごした記憶が一切ないということである。

どうだろうか? これは当然のことながら、創作である可能性もあるが、しかし、もしこれが本当に起こったことだしたら、かなり興味深い体験である。そしてBの場合は、何か眠ることに、タイムリープする秘密があったりするようだ。

このブログにおいては既に何度か紹介させて頂いているが、理論物理学者の話によれば、時間というのは、過去も現在も未来も同時に存在しており、我々の意識が過去→現在→未来というふう動いていくから、時間は流れているように見えているだけとのことである。そしてもし本当にそうだとするならば、ごく少数の人々は、この人間の意識が過去から未来へと向かって進む原理ーーー法則を打ち破って、現在から過去へ、あるいは現実Aから現実Bへシフトとするといったようなことも可能となるのかもしれない。

そして更に言うなら、我々が普段体験しているマンデラ・エフェクトというものは、Bという少年が体験した簡易版と言えるのではないだろうか?

と、今日のブログは以上となる。今日も最後までこのブログを読んでくださった方には感謝する。尚、いつも書いていることではあるが、僕はこのようなアイディアをもとに小説を書いており、複数電子書籍サイトから販売している。下記に『異世界侵略』という小説の一部を記載しておくので、もし興味がある方がいらっしゃたら一度読んで頂けると非常に嬉しい。

異世界侵略
第一章 迷い込んでしまった世界


 僕はその日、意味もなくだらだらと自宅でネットサーフィンをしていた。大学四年生の僕は、ほんとうは就職活動に向けて色々と企業の情報を集めたり、エントリーシートを書いたりしなければいけなかったのだけれど、あまりやる気が出ずにいたのだ。まず第一に暑かったということもあるのだけれど、でも、それ以前に、僕は就職することに対して漠然とした抵抗感を持っていた。抵抗感というか、恐れがあった。というのも、僕には正社員になって働くということが、とても大変そうに思えたのだ。義務だとか、目標だとか、終わりのないサービス残業だとか、上司とかとの人間関係だとか、とにかく、色々と就職にまつわるネガティブなイメージが僕のなかにはあった。僕はできれば就職なんてしたくないと思っていた。そういうわけで、僕の就職活動に対する注意力はかなり散漫、というか、限りなくゼロに近かった。だからなのか、現実逃避するように、僕はその頃、パラレルワールドというものに強く興味を惹かれていて、暇があればネットで色々と調べていた。

 パラレルワールドというのは、異世界のことだ。僕たちが生活しているこの現実世界と平行して、恐らく無数に、あるいは無限に、存在していると考えられている世界のことだ。

 僕がパラレルワールドというものの存在、というか、そういった考え方があることを知ったのは、やはりインターネットで調べものをしていたときのことだった。僕はもともとどちらかというとオカルト的な話題を好む傾向があって、常日頃から、一般のひとからしてみれば胡散臭くてバカバカしいと思える、タイムマシンだとか、アトランティス大陸だとかいった情報をネットで調べていた。そしてそういった情報を色々と見ているうちに、僕は偶然、パラレルワールドというものの存在を知ることになったのだ。

 それは、ジョン・タイターという未来からやってきたという人間がインターネット上に残していったとされる書き込みで、彼はそこでタイムトラベルに関する理論を詳細に展開していた。そしてそこで僕が強く興味を惹かれることになったのが、タイムトラベルというものを説明する際に、タイターが用いていたエヴェレットの多世界解釈という考え方だった。もし過去へタイムトラベルすることが可能だとすれば、当然そこにはタイムパラドックス(たとえば親殺しのパラドックス。僕が過去に戻って親を殺すと、当然僕は生まれてこないことになるのだけれど、では今度は生まれてこないはずの僕がどうやって親を殺すことができたのかといった矛盾)というものが生まれることになるのだけれど、その矛盾を上手く解決してくれるのが、この多世界解釈という考え方だった。

 多世界解釈とは何かというと、僕たちが普段何気なくしている日常の選択の数だけ、無数に世界は分岐して広がっていっているのではないかという考え方だ。たとえば、僕が真面目に就職活動をしている世界と、そうではない世界といったように。

 というか、もっと細かく、僕が欠伸をした世界と、しなかった世界というように、つまり、可能性の数だけ、無限に世界は分岐して増えていっているのではないかという考え方だ。そしてこの考えは正しいと未来人タイターは述べていて(つまり、僕が過去へ戻って両親を殺したとしても、それはAから生まれたA”という世界が生まれるだけで、その世界とはべつに僕が生まれたAという世界はちゃんと残っているので問題は起こらないという考えだ)、そのことは僕を非常に興奮させることになった。僕が今こうして過ごしている現実世界とはべつに、他に一体どんな世界が存在しているのだろうと考えると、僕は非常にわくわくすることになった。もしかすると、遥か遠い昔に分岐した世界では、今の日本とはかけ離れた歴史を持つ日本が存在しているのかもしれなかったし、もっと言うと、今の現実の世界とは大きく文明の進化の仕方が異なった世界だって存在しているのかもしれなかった。

 そしてそんなふうに考えているうちに、僕はどうにかしてそういった異世界へ行くことはできないものだろうかと思い始めるようになった。でも、誤解しないで欲しいのだけれど、僕としてもまさかそこまで真剣に異世界に行けると信じていたわけではない。ごく軽い、冗談みたいな、退屈を紛らわすような気持ちで、もしほんとうにそういった異世界があったら面白いな、そういった異世界へ行くことができたら楽しいだろうな、と、夢想していただけのことだ。いや、ほんとに。嘘じゃなくて。

 で、話は戻るのだけれど、僕はその日の午後、確か時間は二時くらいだったと思うのだけれど、生温い扇風機の風を浴びながら(僕は昔からどうもエアコンの風が苦手で、よっぽどのことがない限りエアコンは使用していなかった)インターネットのサイトをあてもなくダラダラと見ていた。そしてそのとき、ふと、気になるサイトを僕は発見した。それは異世界へ行く方法と記されたサイトだった。

 バカバカしいと思いつつも、気になった僕はそのサイトに飛んでみた。すると、そのサイトの運営者は、軽快な、さわやかなタッチの文章で「異世界へ行くことはとても簡単なことです」と書いていた。「もしあなたが今の現実にうんざりしていたり、あるいは飽き飽きしていたり、はたまたハラハラドキドキしたいと思っていたら、ぜひ異世界へ行ってみましょう!」とサイトの運営者は、異世界へいくことが、あたかもなんでもない、そのへんのどこにでもあるアトラクションへ行くことでもあるかのような調子で書いていた。その軽いのりの文章は、ひょっとするとほんとうに簡単に異世界へ行けてしまうんじゃないかと僕を惑わせた。

 さらに文章を読み進めてみると、サイトの運営者は注意書きとしてこう記してもいた。ただし、異世界へ行くのはあくまでも自己責任でお願いします、と。異世界というものは無限に存在しており、あなたが訪れることになる異世界は、あなたがほんとうに望んでいる世界かもしれないし、あるいは全く望んでいない、悪くすると、悪夢のような世界なのかもしれません、と。残念ながら、わたしが発明した方法では任意の異世界へ行くことはできないのです、と、サイトの運営者は注意を促していた。どうやらサイトの運営者が考案した方法では、そのときどきによって訪れる異世界は異なることになり、しかも、個々人よって(その異世界を訪問するひとの心の状態や、体調等によっても左右されるらしい)訪れることになる世界も様々に違ってくるようだった。それでもよければ、ぜひ、わたしが発明した方法を試してくださいとサイトの運営者は文章を締めくくっていた。

 僕はここまで文章を読み進めてから、ごくりと唾液を飲み込んだ。緊張と興奮でそわそわと落ち着かない気持ちになった。そのときには僕はほとんど運営者の言葉を信じ始めていた。このサイトの運営者が考案した方法を使えば、ほんとうに異世界へと行くことができるんじゃないか、と、僕は怖いような、わくわくするような気持ちで思った。

 僕はマウスをスクロールして、更にサイト下部にある、異世界へ行く方法の詳細を確認してみた。すると、そこには三角形を組み合わせて作られたような星の図形が描かれていた。運営者の説明によると、この図形をずっと集中して眺め続けていると、やがてその図形が歪んで見え始め、さらにしばらくすると、その図形の奥が陽炎のように揺らいで見え始めるはずだということだった。そしてそこまで進めば作業は完了で、気がついたとき、あなたの身体は既に異世界へと移行していますとサイトの運営者はわりと簡単に文章を締めくくっていた。

 ほんとうにこんなことで異世界へ行けるものだろうかと首を傾げたくなるのと同時に、その誰にでもできる簡単な方法であるところが、ほんとうぽくて少し怖いような気もした。

 どうしよう。僕は迷った。試してみたいという気持ちはあったのだけれど、でも、同時に、強い恐怖もあった。気になるのが、異世界へと行ったあと、もとの世界へと戻る方法がどこにも記されていない、というところだった。もし、ほんとうに異世界へ行くことができたとして、もとの世界へ戻りたいと思った場合、一体どうすれば良いのだろう、と、僕は不安を感じた。そしてその方法についての記述がサイトのどこかに載っていないだろうかと思って、僕はもう一度詳しくサイト内を見てみたのだけれど、そのような記述を見つけることはできなかった。もし、サイトの運営者の書いていることがほんとうのことだとすれば、当然もとの世界へと戻ってくる方法もあるはずなのだけれど。なぜなら、もしそうでなければ、このサイトの運営者はどうやってこのサイトを作ったのだ?ということになるからだ。あるいはただ単純に、もとの世界へと戻る方法を記載するのを忘れてしまっただけなのかもしれなかったけれど。

 と、ここまで思考を進めてから、僕は我に返った。おい、おい、頭を冷やせよ、と。ほんとうに異世界へ行くことなんてできるはずがないじゃないか、と。何を本気にしているんだ、と、僕は苦笑いした。どうせこれは誰かが暇つぶしに作った罪のない悪戯、余興のようなものなのだ。だから、そもそものはじめから異世界へ行くことなんてできないし、従って、危険なことなど何もないのだと僕は思った。というか、僕は自分自身にそう言い聞かせるように思った。
 そして、僕は実際に異世界へと行く方法を試してみることにした。まあ、作者の悪戯に騙されてみるのも悪くないかな、と、半分強がりながら。

 マウスをスクローしてサイト下部にある、三角形を重ねて作られた星の図形をパソコンの画面の中央あたりに表示させる。そして説明にあったように、僕はその図形をじっと注視した。時間にして五分くらいのあいだ、僕は真剣にその星の図形を眺め続けた。でも、予想通り、何も変化は起こらなかった。星の図形を眺めたことによって、特に景色が変化するようなことはなかったし、説明にあったように、図形の奥が陽炎のように揺らいで見えるというようなこともなかった。なんだ。バカバカしい。やっぱりただの悪戯だったのか、と、僕はがっかりしたような、でも、それでいて安心したような気持ちで、その図形を眺める行為を中断しようとした。でも、その瞬間、異変が起こった。ほんとうに、サイトの作者が記載していたように、星の図形の奥が陽炎のように揺らいで見え始めたのだ。そして一瞬、図形の奥に、何か黒い、鬼のお面ようなものを被った人影が見えたように思った。と、その直後、僕は強烈な目眩を覚えることになった。僕の視界は渦巻きながら、一点に収縮していき、やがて消滅した。


 気がついたとき、僕は机の上でいつの間にか俯せになって眠ってしまっていた。……変な夢を見たな、と、僕は思った。微かに頭が痛かった。顔をあげてみると、窓の外の向こうに夕暮れの空が広がっているのが見えた。それはなんの変哲もない、いつも通りの夕暮れの空だった。でも、強いていえば、少し空の色が赤過ぎるような気がしないでもなかった。いつも僕が見ている夕暮れの空は、もっと半透明の、美しい色合をしているのに、でも、今日の夕暮れの空は、血液の赤を思わせるようなどす黒い赤色をしていた。だけど、それはただそんな気がするだけなのかもしれなかったし、またときと場合によっては、実際にこんなふうに空が赤黒く見えることだってあるのかもしれなかった。だから、僕もそれほど気に留めることはなかった。点けっ放しにしていたはずのパソコンの電源も知らないうちに落ちていて、少し変だなとは思ったけれど、これもきっと僕が無意識のうちにやったのだろうと判断して、それほど留意して確認するようことはしなかった。

 僕は身体を起こすと、両腕をあげて大きく伸びをした。それから僕は腹が減ったなぁと思った。何でも良いから腹のなかに食べ物を入れたいと僕は思った。僕は自分の部屋から出で、一階の台所へ行こうと思い立った。確かインスタントラーメンがあったはずだった。それに、このくらいの時間帯であれば、パートから母親が戻ってきていてもおかしくない時間帯だった。上手くすれば、母親に何か作ってもらえるかもしれないと僕は単純に考えた。

 僕はそれまで腰掛けていた椅子から立ち上がると、部屋のドアを開けて階段を降りていった。そして台所へと入っていった。と、そこで僕はふと違和感を覚えることになった。というのも、台所の様子がいつもと違っているのだ。台所の広さ自体は変わらないのだけれど、でも、そこに置かれているダイニングテーブルが、僕の知っているものではなかった。いつもそこにあるダイニングテーブルは、もう七年くらい使い込んだ、茶色の、地味な感じがするものだったのに、それがいつの間にか、少し凝った、黒いデザインの、真新しいものに変わっていた。台所のキッチンも、いつの間にか最新の、オシャレな感じのする、システムキッチンに変わっていた。

 わけがわからなかった。母親は一体いつの間に、こんな改装工事を行ったのだと僕は首を捻った。今日の朝、この台所に入ったときは、いつもと何も変わらなかったのに。もし母親が、僕が部屋に籠っているあいだに、改装工事をやったのだとしたら、それなりに大きな音がするはずだし、その音に僕が気づかないはずはなかった。あるいは僕が眠っているあいだに行ったのだとしても、僕は眠りが浅い方なので、それだけの大きな音がすれば、当然目を覚ましていたはずだった。それに、そもそも、今日の午後、つまり僕が家にいるあいだ、母親はパートに出かけていて、家にはいなかったはずだった。その時間帯に家にいたのは僕だけで、だから、業者が僕に断りもなく、勝手に工事をやって、勝手に帰っていくということは、考えにくいことだった。……何かが変だ、と、僕は不審に思った。

 そしてそれから僕は慄然とした。背筋がぞっと寒くなるような感覚を僕は覚えた。もしかしたら、と、僕は思い当たった。ほんとうに、僕は異世界へと迷い込んでしまったんじゃないのか、と。それから、僕が思い出したのは、あの星の図形の奥に一瞬見えた、黒いお面のようなものを被った人間のことだった。頭に角を生やした、鬼のような形相をした人影。僕はあれはてっきり夢だと思い込んでいたのだけれど、でも、まさか、実はほんとうに起ったことだったのだろうか……。

 不安に駆られた僕は、一旦食事を取るのを中止すると、それまでいた台所を出て再び階段を駆けあがり、二階にある自分の部屋のなかへと戻った。そして机の上のパソコンの電源を入れた。なんだか胸騒ぎというか、嫌な予感がしたのだ。
パソコンが立ち上がると、僕はすぐに奇妙な点に気がつくことになった。僕はインターネットに接続すると、ヤフーのトップページが最初に開くように設定していたのだけれど、それがいつの間にか、見た事も無い、 KENSAKUという赤い文字で書かれた検索エンジンに変更されていたのだ。

 わけがわからなかった。まさか、ほんとうに異世界へ来てしまったのか、と、僕は体温が急速に低下していくような感覚を覚えた。けれど、僕は首を振ってすぐにその自らの考えを否定した。きっと僕のパソコンがウィルスか何かに感染してしまって、そのウィルスが僕のインターネットの検索エンジンを勝手に変更してしまったのだろうと僕は考えた。多分そうだ……絶対にそうだ……僕は自分自身に半ば必死に言い聞かせるように思った。そんな、まさか、ほんとう異世界へ来てしまうことなんてあるはずがないじゃないか、と、僕は自分自身を励ますように思った。

 ……とにかく、あのサイトだ、と、僕は思った。僕が机の上で眠ってしまう前まで見ていたあのサイト。異世界への行き方が書かれたサイト。僕はもう一度あのサイトを見て確認したかった。あのサイトを見れば、今、自分の身に何が起こっているのか、これからどうすれば良いのか、ただの勘だったけれど、何かがわかるような気がした。
それで、僕は早速、そのKENSAKUという、見たこともなければ聞いたこともない検索エンジンを使って、この奇妙な異変が起こる前まで僕が見ていたサイトを探し始めた。

 でも、それは見つからなかった。キーワードとなる言葉の組み合わせ方に問題があるのかもしれないと思って何度か試してみたのだけれど、でも、どうしても、僕が見ていたホームページを見つけ出すことはできなかった。異世界に関するサイトはいくらでも出で来るのだけれど、でも、何故か、僕が見ていた、異世界への行き方というサイトを探し出すことはできなかった。たまたまそのサイトが検索されにくくなっているだけなのかもしれなかったけれど、でも、薄気味悪いというか、僕は落ち着かなく感じた。
それで、僕が思い当たったのが、この僕が今使っているKENSZKUという検索エンジンに問題があるのではないかということだった。きっといつも僕が使っているヤフーを使えば、探しているサイトもすぐに見つかるのではないかと僕は予測を立てた。そして僕は早速、今度はキーボードでヤフーと文字を打ち込んで検索をかけてみた。

 すると、次の瞬間、信じられない結果が、パソコンの画面に表示されることになった。というのも、ヤフーが、検索結果に表示されなかったのだ。当然、ヤフーと検索をかければ、ヤフージャパンだとか、ヤフーオークションだとかといったものが検索結果にあがってくるはずなのに、でも、どうしてか、全くそれらのものが、検索結果にひっかかって来ないのだ。唯一表示されたのは、「やったー」というもので、それをマウスでクリックすると、驚いたり、感動したりしたときの言葉の表現とだけ記載されてあった。
その結検索果を見た瞬間、僕は自分の思考が硬直するのを感じた。あるいはもしかすると、僕は、ほんとうの、ほんとうに、異世界へと来てしまったのではないか、と、僕は血の気が引くように思った。

 でも、少し間をおいて、僕はそんな自らの考えを打ち消した。やはり異世界へ来てしまうことなんてほんとうにあるわけがないと僕は思い直した。きっとインターネットのシステムが一時的に混乱していて、ヤフーと検索しても検索されないようになっているだけなのだろうと僕は推測した。もっと何か違う、誰でも知っていることを調べてみればいいのだ、と、僕は思いついた。たとえば日本の有名人とか。そうすれば、当然僕が知っている結果が、検索結果に表示されてくるはずだと僕は確信した。
それで僕は、今度は日本の著名人の名前を次から次へと調べっていった。たとえば松本人志だとか、浜田雅功だとか、きゃりーぱみゅぱみゅだとかBZだとかといった、有名な芸能人、アーティストについて。

 そして結果はどうだったのかというと、実に信じられないことに、それらの名前は全く検索結果に表示されてこなかった。唯一、浜田雅功という、恐らく同性同名の別人が、地方で市議員に立候補しているのが、検索結果にヒットしたくらいのものであった。
そんな馬鹿な……と、今度こそ僕は青ざめることになった。これだけの著名人の名前が検索してヒットしないというのは考えられないことだった。これはほんとうに異世界へ来てしまったのかもしれないと僕は思った。僕が知っている有名人がひとりも存在していない異世界へ、と。

 と、ここまで考えてから、待てよ、と、僕はふとあることに気がついた。テレビを付けてみればいいのだ、と、僕は思いついた。テレビを付けてみて、もしそこに僕が全く知らない芸能人がたくさん居るようであれば、それはすなわち、ここは異世界だということになるんじゃないのか、と、僕は思った。そうして、僕は戦々恐々としながら、部屋にある小さなテレビのスイッチを押し、テレビを点けてみた。すると、流れ始めたのはニュース番組だった。時間帯が時間帯なので、どのチャンネルを回してみてもバラエティ番組はやっていなかった。ちなみに、現在テレビで流れているニュースは、ごくごく普通の、日本全国のあちこちで発生した事件や、政治情勢について報道したもので、特に不自然な点は感じられなかった。なんとなく、出ているニュースキャスターの顔に見覚えがないような気もしたけれど、でも、普段それほど注意してニュース番組を見ているわけでもない僕には、それがただ単にそんな気がするだけなのか、それとも実際にそうなのか、見極めることは難しかった。

 ……ニュース番組を見るともなく見ながら、やっぱり全てはただ思い込みなのかな、と、僕は自分自身を落ち着かせるように思った。冷静に考えて、異世界へ行く事なんてできるはずがないし、さっき著名人をネットで調べて検索結果に表示されなかったのも、きっと何か原因があるのだろう、と、僕はざわつく自分の気持ちを無理に納得させた。でも、たとえば、それはどういった理由から、と、一方でもうひとりの自分が僕に質問した。僕は眉間に皺を寄せて考え込むことになった。理由はえーと、なんだろう?…とにかく……。

 と、そうやって僕が自問自答していると、ふいに、一階で物音がした。状況が状況なので、僕はものすごくびっくりしてしまったのだけれど、でも、それは恐らく母親がパートから帰ってきて、家の玄関を開けた音だと思われた。僕はいつもと変わらない母親がそこにいることを確認したくて、テレビを消すと、自分の部屋から出で、一階へと降りて行った。
一階へと降りて行くと、玄関口に母親がいて、彼女は靴を脱いで家のなかにあがろうとしているところだった。母親は僕の存在に気がつくと、
「ただいま」
と、笑顔で言った。

「……うん」
と、僕はどちらかというと強張った、固い表情で頷いた。気のせいか、母親の雰囲気がいつもと違っているように感じられたのだ。どこがどんなふうに違っているのかと問われると、上手く説明することはできないのだけれど。でも、なんとなく、いつもと様子が少し違っているように感じられた。まるで母親に良く似た、全くの別人を見ているような。僕が母親の顔をじっと見つめていると、母親は家のなかにあがりながら、
「どうかしたの?」
と、不思議そうな顔をした。

「……いや、べつに」
 僕は微苦笑して首を振った。まさか母さんはほんとうの母さんだよね?なんて訊ねることができるはずもなかった。
「すぐにご飯にするわね」
 と、母親は僕の戸惑いに気がつくこともなく、何気ない口調で言いながら、台所の方へと向かって歩いて行った。僕はなんとなく母親のあとを追って歩き出した。

「……あのさ」
 僕は少し躊躇ってから、母親の背中に向かって声をかけた。母親は台所の冷蔵庫を開けようとしているところだった。母親は冷蔵庫のドアを開けるのを中断すると、怪訝そうに僕の方を振り返って、僕の顔を見た。
「いつの間に台所のテーブルとか新しくしたの?」

 母親は僕の問いに、ぽかんとした表情を浮かべた。まるで僕が何のことを言っているのかわからないといったような顔つきだった。
「今朝まではこんなテーブルじゃなかったよね?キッチンもいつの間にか新しくなってるし。だから、いつの間に変えたんだろうと思って」
「……何を言ってるの?」
 母親は僕の顔を何か気味の悪いものでも見るよう見てから、困ったように口元を綻ばせて言った。
「テーブルもキッチンも前からずっと同じじゃない?」
 母親は当然のことのように言った。そこには微塵も、僕のことをからかったり、嘘をついたりしているような雰囲気は感じられなかった。

「……そんなはずないよ」
  と、僕は食い下がった。
「だって、今朝、俺、前からずっと使ってる茶色のテーブルがあるのを見たし」
「……母さん、あんたが何のことを言ってるのか、さっぱりわからないわ。母さん、今日、パートで色々あって疲れてるのよ」
母親は面倒くさそうな声で答えた。そうして母親は僕に背を向けると、冷蔵庫のドアを開けて、夕食を作る準備に取りかかった。僕はそんな母親の背中を見つめながら、何も声をかけることができなかった。自分の身体がやわらかい暗闇に向かって落下していくような感覚があった。どういうことだ?と僕は思った。テーブルがずっと前から使っていたものだって?そんなはずがないじゃないか、と、僕は思った。ほんとうに今朝まで茶色の、古いテーブルだったのだ。それとも、僕の記憶違いなのだろうか?テーブルはずっと前に新しいものに取り替えられていて、そのことに僕がずっと気がついていなかっただけだということなのだろうか?そんなはずがないと僕は思った。……でも、ほんとうにそうなのだろうか?もしかして、僕の頭がおかしくなってしまったのだろうか?

「あんた、お風呂まだでしょ?今のうちに入って来たら?」
僕が台所で立ち尽くしていると、母親がふと気がついたように僕の方を振り向いて言った。

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ではまたのブログでお会いしよう!!